傘をこしらえる

ポンと開いてパッと閉じて、傘は半球体の形がおもしろい。四角いキャンバスに絵を描くのとも、布に描くのとも違っています。ちょっと着物と似ている気がする。着物は形が決まっているのに、色柄や配色で柄行きが無限に広がります。組み合わせる帯締めや帯揚げでもガラリと印象が変わる。傘もそう、色や柄はもちろん、最後につけるボタンひとつ、ハンドルひとつですごく違って見える。まだまだ私にはいっぱいできることがあって、真っ白な傘に向き合うと不思議なくらいワクワクします。

一本ずつの日傘は、ひとりずつ違う人間がいるように、みんな違ってみんなおもしろい。

たとえば、ある日の朝はこんな風。

好きな音楽をかけてアトリエの真ん中に白い傘をセットし、絵の具と筆を出して、水を汲んだバケツを用意する。ふぅーっと大きく息を吐いて気持ちを整える、そして描く。私にとって日傘はちょっと特別で、最初に色だけはなんとなく決めるんだけれど、下描きなしでいきなりバッと描きます。描きたくなったらその気持ちを抑えないで、やっていることを中断してでも、描きたいと思ったら描く。

自然にできた色のにじみ、それがいちばんきれいだと思っていて、それにはきれいな心で描きたい。きれいな心っていうか、ざわざわしていない気持ちのときに描くこと、それだけは意識しています。私が作るものは、嘘もごまかしもなく私からしか出てこない。だからなるべく素直でいたいのです。それしかできないっていう自分でもあるけれど。私がいつも見ている風景とか感じたこと、子ども、家族…、本当に身近なことが絵柄になっています。たとえば、子どもが真剣にささいなことで泣く、その泣き顔にすごいきゅんとなったりして。そういう日々の積み重ねが、たぶん私の心の中にたまっていって、溢れだすように描きたくなるのかもしれません。

日傘は布用の絵の具で直接描いて、よく乾かしてからハンドルを選んで、最後にアンティークのボタンを留める。刺しゅうをしておめかしすることもあるけれど、だいたいの流れはこんなぐあいに進みます。傘を描く隣には、いつもスケッチブックが置いてあって、こういうのを紙にも描きたいと思ったら同時に描くこともあります。雨傘や晴雨兼用の傘は、私が描きためた原画からオリジナルプリントを作ってもらう。

絵の具も水彩や油彩、アクリル絵の具と自由に使って、絵の具だけじゃなく鉛筆や色鉛筆とか、写真をコラージュすることも。子どものちょっとしたメモも、かわいいと思ったら取っておいたり、私がおもしろいと思うものはなんでも使います。ほら、全部押し花で作った柄もあるんですよ。だから雨傘の場合は、描くというよりは日々の暮らしを採集するような感じ。ひとつひとつの傘に、小さな物語があります。