ともに歩む人

NYに行くたびに会いに行く人がいます。ニックです。アンティークジュエリーのディーラーで、私はどれだけの知識を彼から学んだことでしょう。先日訪れたときは、半年も前に「ジュエリーボックスを見たい」と言った言葉を覚えてくれていて、200個くらいボックスを集めてくれていました。「これは、この細工が」と話し出すととまらない。私もずっと聞いていて、飽きることがない。…もう70代かな。ニックとあと何回会えるだろうと思うと、その一回一回がすごく大事に思えるんです。

振り返ると、人との出会いがあって、私はここまで来られたのだと思います。
日本での職人さんたちも、同じ方向を見つめる同志です。商品は一緒に作ります。こういうものを作ってほしいと希望を書いた指示書だけを送って、出来上がりにダメ出しして…というやり方は私はできないんです。できない理由は必ずあるし、できる方法も必ずある。目の前で、こうやって、こういう方法がある、この金具ならできる、なら、こういうデザインにしたらもっといいね、と一緒に一つのアクセサリーを作り上げていく。

去年作ったのは、黒い樹脂のキューブ。「樹脂で、軽いオニキスを作りたい」と思ったのがきっかけです。横田努さん(横田樹脂工芸:写真・)に本物の石に見えるものを作ってもらいました。横田さんが言うには「かっちり真四角に作るのは簡単。でも、それではオモチャに見える。本物のオニキスのように見えるには、どこかひずみが必要」。そのために、あえて旧式で、手のかかる方法を選ぶわけです。

パーツができたら、オデ・アクセサリーの尾崎清隆さんがまとめあげます。どんな金具にするか、これなら溶接がいいとか、豊富な知識と経験がある。一緒に仕事をすることで化学反応が起きて、驚きのある、感動が戻ってくる。「こうきたか」「こんな方法があったのか」と。大変ですが、楽しい工程です。

私は朝型人間で、4時、5時に起きることもよくあって、何日も考えていたアクセサリーのパーツのことで疑問があったり、ひらめくことがあったりすると、すぐにでも尾崎さんに電話をしたくなる。まだ6時だから、あと30分待とうと思いつつ、早く話をしたくてたまらない。実はその話をしたら、尾崎さんは笑って「何時でも電話してください」と言ってくれるんです。「阿部さんの気持ちはわかる。実は、僕もそうだから」と(笑)。

尾崎さんたちには、展示会にもいらしてもらいます。バイヤーさんの反応を見てもらい、スタッフには工程で工夫したところを説明してもらう。そうすると輪がつながるんです。気持ちでつながる輪、ですね。もちろんお客様も、その輪につながっています。私はいつも「商品だけじゃない、キラキラした気持ちを持って帰ってもらいたい」と思っているのですが、それは、対応する私たちの言葉だったり、笑顔だったりしますが、何より手間と時間をかけたストーリーがキラキラにつながっていると信じています。

春夏コレクションでは、フランスのレザーのファクトリー「メゾン ボワネ」とコラボレーションします。ピンクやグリーンのレザー、全10色使っています。ブレスレットとバッグです。このブレスレット、見てください。レザーの断面には7回も色をのせているんです。ふつうはしません。だから、この色になるし、この美しさが出る。そういうところを見てほしいし、伝えていきたいんです。